朝と夕方の1日2回。長いあいだ当たり前だった食事のリズムが、10歳を過ぎたころから少しずつ崩れてくることがあります。
以前はぺろりと食べきっていたのに、最近は1回分を少し残す。食べ終わるまでに時間がかかる。朝はあまり進まず、夜になってようやく口をつける。そんな変化に気づくと、「回数を増やしたほうがいいのかな」と迷う飼い主さんは少なくありません。
3回、あるいは4回に分けたほうが老犬の体には楽なのでは、と考えるのは自然なことです。ただ、食事の回数は年齢だけで決まるものではありません。
手がかりになるのは、1日に食べる総量と、愛犬が今どんなふうに食べているか。この2つを軸にすると、2回のままでいいのか、分けたほうがいいのかが見えてきます。
回数を増やすと太るのでは、と心配になる方もいます。ただ、体重に大きく関わるのは、回数そのものよりも1日に食べる合計量です。同じ1日量を分けるだけなら、回数を増やしたことだけで摂取量が増えるわけではありません。おやつやトッピングも含めた合計を見ながら調整します。
2回で足りている犬もいれば、3回や4回に小分けにしたほうが食べやすくなる犬もいます。愛犬がどちらに近いかは、毎回きちんと食べきれているか、体重や便が安定しているかといった、ふだんの様子から見当がつきます。
老犬の食事回数は1日何回が目安?
老犬の食事回数に「これが正解」という決まった数字はありません。小型犬でも中型犬でも、そのときの食べ方しだいで、ちょうどよい回数は変わってきます。
1日2回で問題なければ変えなくてよい
まず前提として、今の2回できちんと回っているなら、慌てて増やす必要はありません。食欲・体重・便が安定していれば、1日2回のままで十分です。
手がかりになるのは、毎回ほぼ食べきれているかどうか。食器を空にできていて、体重も便も大きく崩れていないなら、回数を触る理由はとくにありません。
年を重ねたから、という一点だけで切り替える必要はない、というのがまず頭に置いておきたいところです。空腹の時間が長くなると胃液で吐いてしまう犬もいるので、食事の前後で吐き戻しがないか、食べたあとに落ち着いていられるかも、あわせて見ておくと安心です。
回数を考える前に
老犬だからという理由だけで回数を増やす必要はありません。今の回数で食べきれているか、体重や便が安定しているかを先に見てみます。
一度に食べきれないなら3回へ分ける
一方で、1回に出す量を食べきれなくなってきたら、分割を考えるタイミングです。
盛った分を少しだけ残す。食べている途中でいったん休む。完食まで妙に時間がかかる。こうした様子が続くなら、1回の量が今の食べる力に対して多くなっているのかもしれません。
食べる途中で休む様子があるときは、回数だけでなく食事中の姿勢も確認してみてください。床置きの器へ首を深く下げている場合は、老犬が食べやすい食器台の高さとおすすめ商品も参考になります。
このとき増やしたいのは回数だけで、量ではありません。1日の総量はそのままに、2回を3回へ分けるところから始めると無理がありません。いきなり4回、5回とするより、まずは3回。夕食を半分に割るだけでも、1回あたりの負担はぐっと軽くなります。
食が細い犬では4回を検討することもある
3回にしてもまだ残す、そもそも1回に食べられる量がかなり少ない、という犬では、4回に分ける手もあります。
夜中や早朝にお腹を空かせてそわそわする犬も、1日の食事の機会を増やすと落ち着くことがあります。ただ、回数は多ければ多いほどいい、というものでもありません。4回以上に細かく分けるなら、飼い主さんが毎日きちんと管理できる範囲におさめるのが現実的です。与え忘れや二重給餌が起きては本末転倒ですから、暮らしのなかで続けられるかどうかを先に考えておきたいところです。
2回・3回・4回のどれが合うか判断する目安
では、愛犬がどの回数に近いのか。食べ方や体調ごとに目安を整理してみます。数字よりも、犬がどんなサインを出しているかで見分けるほうが実際的です。

2回のままでよい老犬
朝夕の2回で、毎回ほぼ食器を空にできている犬。体重が大きく増えも減りもせず、便の状態も落ち着いている。空腹の時間があっても吐くことがなく、食べ終わったあともゆったり過ごせている。こういう犬は、今のリズムがうまく合っている証拠です。無理に3回や4回へ変えると、かえって食事の間隔が詰まって、1回ごとの食欲が落ちる犬もいます。
10歳を過ぎても、以前と変わらず勢いよく食べる犬は珍しくありません。見た目が元気で食べっぷりもよいなら、老犬という区切りにとらわれて食事のかたちを変える必要はありません。今のやり方を続けながら、食べ残しが目立ち始めた日を分割の合図にすればよいだけです。
3回に分けたい老犬
盛った分をいつも少しだけ残す。食べる途中で疲れたように離れる。朝は乗り気でないのに夜はよく食べる、といった食欲の波がある。あるいは、食事の間隔が空きすぎると空腹で吐いてしまう。こうした犬では、同じ量を3回に分けることで、1回ごとのハードルが下がって食べやすくなります。
朝はあまり食べず、夜に食べる量が偏る犬もいます。無理に朝の量を増やそうとするより、朝を軽くし、そのぶんを昼や夕方へ回す方法もあります。1日を通して必要な量を食べられるかを見ながら、その子の食欲が出やすい時間帯に配分します。
4回に分けることを考えたい老犬
1回に食べられる量がかなり少なく、3回にしてもまだ食べきれない。寝る前や明け方に強くお腹を空かせる。少量ずつなら口をつけられる。そんな犬では、4回に分けて食べる機会を増やすと、1日の必要量を無理なく取りやすくなります。体重を保ちたい犬にとっても、一度にたくさん食べられないぶんを回数で補う考え方は理にかなっています。
ただ、4回はどんな犬にも勧められる形ではありません。日中ずっと家にいる、あるいは家族で交代しながら世話ができる、といった環境があってこそ続けられます。1回の食事がごく少量になるため、飼い主さんは「これで足りているのか」と不安になるかもしれません。判断するときは、1日を通した合計量を見ます。体重は同じ条件で定期的に測り、短期間のわずかな上下ではなく、減少や増加が続いていないかを見てください。
| 愛犬の様子 | 回数の考え方 |
|---|---|
| 2回で食べきり、体重も安定 | 2回を継続 |
| 1回量を少し残す | 3回へ分ける |
| 1回でほとんど食べられない | 3〜4回へ分ける |
| 早朝や空腹時に吐く | 夕食を分け、寝る前に少量 |
| むせや嘔吐、元気低下がある | 回数だけで対応しない |
食事回数を増やしても1日の総量は変えない
回数を分けるときに、いちばん気をつけたいのがここです。回数を増やすたびにフードの量まで増やしてしまうと、1日の総量がふくらんで太る原因になります。あくまで「同じ量を何回かに分ける」だけ、と考えておきます。
意外と起こりやすいのが、1回あたりの量を変えずに回数だけ増やしてしまうケースです。2回のときと同じ量を3回与えれば、1日の食事量は1.5倍になります。回数を変えるときは、まず1日の総量を決め、その量を予定する回数に分けます。
1日量を回数で分ける
イメージしやすいように、1日120gを例にしてみます。

| 回数 | 1回量の例 |
|---|---|
| 2回 | 60g+60g |
| 3回 | 40g+40g+40g |
| 4回 | 30g+30g+30g+30g |
回数が2回から4回に増えても、1日に食べる合計は120gのまま変わりません。
ここで挙げた120gは、あくまで説明のための数字です。実際の1日量は、今与えている量や、フードの袋に書かれた給与量の目安を基準にしてください。同じ体重でも、活動量やフードの種類によって適量は変わってきます。
おやつやトッピングも1日の摂取量に含める
見落としやすいのが、おやつやトッピングの扱いです。食事とは別枠、と思いがちですが、体に入るカロリーという意味では、主食と同じ1日の総量の一部です。
回数を増やすと、そのぶん何かを口にする機会も増えます。毎回トッピングやおやつを足していると、知らないうちに摂取量が増えることがあります。おやつやトッピングも1日の摂取量に含め、主食を大きく減らさなければならないほど追加しないようにします。
体重と便を見ながら調整する
分け方を変えたあとは、しばらく体重と便に目を向けておきます。体重が増えてきたら総量が多すぎるサイン、逆に減ってきたら足りていないサインかもしれません。便がゆるくなった、食べ残しが増えた、といった変化も、今の分け方が合っているかを教えてくれます。
細かいカロリー計算までする必要はありません。数日から1週間ほど、いつもと違う点がないかに気を配れば十分です。
老犬の食事時間は何時がよい?
回数が決まったら、次は時間の組み方です。とはいえ、何時何分にこだわる必要はありません。毎日だいたい同じリズムで、間隔が偏りすぎないようにするだけで十分です。
2回なら朝と夕方を基本にする
1日2回なら、朝と夕方に分けるのが基本の形です。厳密な時刻よりも、毎日近い時間帯にそろえることのほうが、体には優しく働きます。朝夕で今のところ問題がなければ、時間帯を変える理由はありません。
気をつけたいのは、食事と食事の間隔が極端に空く組み方です。夜の食事から翌朝までの時間が長いと、明け方に黄色い液を吐く犬もいます。食事時間を調整すると落ち着く場合もありますが、嘔吐の原因を空腹だけと決めつけることはできません。繰り返す、元気や食欲が落ちている、下痢などほかの変化もある場合は、食事時間の調整だけで様子を見続けないようにします。
3回なら夕食を2回に分ける方法もある
3回にするなら、たとえば7時・17時・21時のように、夕方以降を2回に割る組み方が扱いやすいです。
7時・12時・17時のように昼を挟む形もありますが、日中に家を空けることが多い家庭では、帰宅後と就寝前に分けるほうが現実的です。夜のあいだの空腹時間が短くなるので、早朝の吐き戻しが減る犬もいます。
4回なら間隔を空けすぎない
4回に分けるなら、7時・12時・18時・22時あたりを目安に、間隔が大きく偏らないよう配置します。もちろんこれも一例で、家庭の生活時間に合わせて前後させてかまいません。1回ごとの量が少なくなるぶん、食べ残しも出にくくなります。
昼に与えられない場合の工夫
仕事などで日中に食事を用意できない場合でも、無理に回数を増やす必要はありません。2回で足りているなら、そのまま2回を続けて問題ありません。
どうしても分けたいときは、帰宅後と寝る前の2回に夕食を割る形が取り入れやすいでしょう。朝・帰宅後・就寝前の3回にすれば、日中に手をかけなくても間隔をならせます。自動給餌器を使えば、留守のあいだに1回はさむこともできます。ドライフードなら扱いやすい一方で、ふやかしたフードやウェットフードは傷みやすいため、長時間セットしたままにしないでください。暖かい季節はとくに気をつけたいところです。日中を1回抜くぶん、朝と夜の量が極端に増えないよう、1日の合計から逆算して割り振っておくと安心です。

| 回数・生活 | 時間例 |
|---|---|
| 1日2回 | 7時・19時 |
| 1日3回 | 7時・17時・21時 |
| 1日4回 | 7時・12時・18時・22時 |
| 昼に不在 | 7時・帰宅後・就寝前 |
| 自動給餌器 | 朝・昼・夕方・夜 |
※時刻はあくまで一例です。愛犬の生活リズムに合わせて前後させてかまいません。
食事回数を増やすときの進め方
回数を変えると決めたら、急がず段階を踏むのがコツです。切り替え方しだいで、犬の受け止め方も変わってきます。
まずは2回から3回へ変える
いきなり4回や5回に増やすと、犬も飼い主も生活が回らなくなりがちです。最初は2回から3回へ、夕食を2つに割るところから始めるのが無理のない進め方です。このときも1日量は変えません。3回で落ち着いてから、必要ならさらに4回を考えれば十分です。
段階を踏むのは、犬の体だけでなく飼い主さんの生活のためでもあります。回数が増えれば、そのぶん器を洗う手間も、食事のたびに手を止める場面も増えます。まずは3回で数日から1週間ほど様子を見て、食べ残しや便、空腹時の吐き戻しなどに変化があるかを見ます。状態が安定しているか判断しにくい場合は、さらに記録を続けます。
1回量をあらかじめ分けておく
朝のうちに1日分を量り、清潔な食品保存用の容器へ分けておくと、その日の給餌が楽になります。先に分けておけば与えすぎを防ぎやすく、家族で世話をしている場合の二重給餌も避けやすくなります。

数日から1週間ほど食べ方を記録する
回数を変えたあとは、しばらく食べ方をメモしておくと、合っているかどうかの見当がつきます。
- 食べた量と食べ残し
- 食べ終わるまでの時間
- 空腹時の吐き戻し
- 便の状態
- 体重
- 夜中や早朝の様子
毎日きっちり書く必要はありません。気づいたことを一言添えておくだけでも、あとで振り返るときに役立ちます。
合わなければもとの回数へ戻してよい
回数を増やすこと自体が目的ではありません。分けてみたら食べ残しがかえって増えた、生活のなかで管理しきれない、犬がそわそわして落ち着かない。そんなときは、元の回数に戻してかまいません。2回で安定するなら、それがその犬にとってのちょうどよい形だった、というだけの話です。
回数を増やしても食べないときに見ておきたいこと
回数を工夫しても食べが戻らないときは、回数以外に理由がないかを考えます。ここでは大きく3つの方向だけ触れておきます。

粒の硬さや大きさが合っているか
噛む力が落ちてくると、粒が硬い・大きいというだけで食べにくくなります。回数を分けても食べが進まないなら、ぬるま湯でふやかして柔らかくするだけで、また食べ始める犬も少なくありません。ふやかす湯の温度や置き時間には向き不向きがあるので、具体的なやり方は老犬のドッグフードのふやかし方にまとめています。
フード自体が合っているか
粒の硬さや回数を変えても食べ方が戻らない場合は、フードの種類や香り、粒の大きさなども見直す余地があります。シニア向けのフードへ切り替える時期や、少しずつ移す進め方は、シニア犬用フードへの切り替え時期と進め方で解説しています。
食事回数を調整してもフードを残す場合は、老犬が食べないときにミシュワンを試す判断ポイントも参考になります。
食事回数だけでなくフードの内容も見直したい場合は、ミシュワンをシニア犬に与える前に確認したいポイントも参考になります。
口元や体調に変化がないか
食べたそうにしているのに食べられない、食べるときにむせる、嘔吐や下痢がある、元気がない、体重が落ちてきた。こうした変化は、回数や食べやすさとは別のところに原因があるかもしれません。
回数だけで対応しないほうがよい変化
食事回数を増やしても食べない状態が続き、むせる、嘔吐や下痢がある、元気がない、体重が落ちてきたといった変化が重なる場合は、回数だけで様子を見続けず、かかりつけの動物病院へ相談してください。
食べない状態が続くときに考えられる原因や、病院へ相談する目安は、老犬がご飯を食べないときの原因と受診目安でくわしく扱っています。
体重の減り方が気になる場合は、老犬が痩せてきた原因と食事の見直し方もあわせて読んでみてください。
老犬の食事回数についてよくある質問
老犬は必ず1日3回にしたほうがよいですか?
いいえ。1日2回で食欲・体重・便が安定しているなら、無理に3回へ増やす必要はありません。回数を増やすかどうかは、年齢ではなく、今きちんと食べきれているかで考えます。一度に食べきれなくなってきたら、そのときに3回への分割を試します。
食事回数を増やすと太りますか?
1日の総量が同じであれば、回数を増やしただけで摂取量が増えるわけではありません。体重に影響しやすいのは、回数を増やすたびにフードを足したり、毎回おやつやトッピングを加えたりして、合計量が増える場合です。
寝る前にご飯を与えてもよいですか?
夕食の一部を寝る前に分ける方法はあります。ただし、1日の総量を増やさず、食後の様子を見ながら少量から試します。嘔吐が繰り返される場合や、治療に合わせた食事時間を指示されている場合は、自己判断で回数や時刻を変えないでください。
おやつも食事回数に含めますか?
回数として数えるより、1日の総摂取量の一部として考えます。おやつやトッピングを毎回足すと合計量が増えやすいため、主食を大きく減らさなければならないほど追加しないようにします。
4回より多く分けてもよいですか?
一度に食べられる量が少ない犬では、少量をさらに複数回へ分けることもあります。ただし、回数が増えるほど与え忘れや二重給餌が起きやすく、管理の負担も増えます。必要性と続けやすさを見ながら考えてください。
自動給餌器を使ってもよいですか?
ドライフードであれば、留守中の食事を分ける方法として使えます。一方、ふやかしたフードやウェットフードは傷みやすいため、長時間置く使い方は避けます。使用できるフードや管理方法は、製品の説明も確認してください。
まとめ
老犬の食事回数は、年齢で一律に決めるものではありません。1日2回で食欲も体重も便も安定しているなら、そのリズムを変える必要はありません。
一度に食べきれなくなってきたら、1日の総量はそのままに、3回、4回へと分けてみます。回数を増やしても量まで増やさないこと、おやつやトッピングも合計に入れて考えることが、体重を乱さないコツです。
そして、回数を工夫しても食べない、痩せてくる、むせるといった様子が重なるときは、回数以外の原因も頭に入れておきます。愛犬の食べ方にそっと寄り添いながら、その子にちょうどよい形を探していけば大丈夫です。